第5回研究会 開催報告

目次

●キャリア支援者の「拠り所」、「実践」の輪をつなぐ学びの場
今回も全国各地で活躍中のキャリアコンサルタントが集いました!

2024年12月21日(土)、第5回「社会正義のキャリア支援研究会」を開催しました。今回も、企業、学校・教育機関、需給調整機関、地域、医療・福祉など、様々な領域で活動に取り組む方々が全国から集い、社会正義のキャリア支援に関する学びを深めました。開催当日は、下村英雄先生(当研究会顧問)のご講義「第5回 社会正義のキャリア支援研究会 -キャリア支援の本質に立ち返る-」の後、テーマ別交流会(グループディスカッション)を行いました。

「毎回、非常に貴重なお話を伺うことができ、心から感謝しております」「共に学べる多くの仲間がいることを嬉しく思います」

【ご参加者から寄せられた感想等の一部です】

  • 毎回、非常に貴重なお話を伺うことができ、心から感謝しております。
  • 「社会正義のキャリア支援」の理論と活動に勇気づけられている私を含む、多くの仲間がいることを毎回嬉しく思います。回を重ねるごとに熱量が増しているように感じています。
  • このような機会をつくっていただき、また、(参加者を)幅広に受け入れてくださり、感謝です。貴重な時間となりました。
  • 下村先生が、ご著書に書かれていることと最新情報をつなぎながら、わかりやすく噛みくだいてご説明くださり、ありがたかったです。
  • 大変貴重な機会です。質の高い議論の場、学びの場に感謝いたします。
  • 同じテーマに関心を持った方々の活動や考えを伺えて、大変ありがたかったです。
  • キャリア支援の歴史や潮流、現在のトレンドや核になっていることが学びになりました。下村先生がチャットのコメントをひとつずつ丁寧に取り上げてくださって嬉しかったです。
  • ・貴重なプログラムを毎回楽しみに参加させて頂いております。今回のテーマ別交流会(グループディスカッション)、良かったです!

開催当日の研究会の様子をお伝えします(開催内容、参加者の声など)

今回の研究会で行われた「講義」「テーマ別交流会(グループディスカッション)」について、当日の資料および参加者の皆さんが寄せてくださった感想やコメントから、その一部をご紹介します。

INDEX
  1. 講義 
    「第5回 社会正義のキャリア支援研究会」
     -キャリア支援の本質に立ち返る -
    下村英雄先生(当研究会顧問、「社会正義のキャリア支援(図書文化社)」著者)
  2. テーマ別交流会(グループディスカッション)
    関心のある支援対象(ミドル・シニア、女性、障がい者、ビジネスケアラー、生活困窮者、ハラスメント被害者など)毎にグループで意見交換を実施
  3. 次回の開催告知 
    2025年3月22日(土)10:00-15:30

    対面(リアル)開催@東京会場

1.講義

下村 英雄 先生(当研究会顧問、「社会正義のキャリア支援(図書文化社)」著者)

第5回 社会正義のキャリア支援研究会」
  - キャリア支援の本質に立ち返る -

当研究会顧問
下村 英雄 先生

参加者の学び、気づき、感想など(講義全体を通じて)

  • 日本だけでなく欧米の最新動向についてのご講義は、この分野の国内情報にしか触れていない私にとって大変貴重な情報であり、学びや気づきをいただいております。ありがとうございます。
  • キャリアに対する日本と欧米の捉え方の違いは、歴史や文化などが異なるので当然だとは思いますが、下村先生の解説をお聞きすることで、より深く理解することができます。フランスの研究者の「人権宣言」へのこだわりの話は、専門書では知り得ない・学べない、リアルな臨場感(生々しさ)があり、とても興味深かったです。
  • 社会正義のキャリア支援論の始まりが、フランスの、やや意地の入った主張から生まれたと知り、とても面白かったです。その中で、(社会正義のキャリア支援が)社会的に認められ、大きな流れをつくっていくことができている要因が、基本的人権と同じ「普遍的なもの」に繋がっているからなのだと思い、フランス人に尊敬の念を抱きました。
  • 社会正義のキャリア支援が「キャリア支援の『本質』に立ち返ろうとしているものである」という言葉が印象的でした。(不公平や分断が)完全に無くなることはないかもしれないけれど、そこに少しでも近づける動きができるかどうか。キャリア支援へ繋がれない人、繋がっても支援に困難性がある人が確実にいること。そういった人を含めた、あらゆる人の声に耳を傾けられる支援者になりたい、と感じました。
  • 世界中で高齢化の先端にあるわが国は、中高齢者のキャリア支援が他国に先んじているということは知りませんでした。自分自身の活動領域でもあるので、さらにいろいろと実践・研究を進めて、社会正義のキャリア支援の活動につなげていければと思いました。改めて先生のご著書「社会正義のキャリア支援」を読み直していこうと思いました。
  • (不公平や分断に苦しむ方々への支援は)社会的に受け入れられることが難しい分野であり、(金銭的にも)支援の主流とはなりえません。当事者の頑張りだけではどうにもならない所へ焦点を当てる支援の必要性を日々感じています。それに応えうる支援者を増やすべく、下村先生が社会正義のキャリア支援について語ってくださることに感謝しています。
  • IAEVG(International Association for Educational and Vocational Guidance:国際キャリア教育学会)の2013年のコミュニケを「憲法のようなもの」と下村先生がおっしゃっていたことが印象に残り、配布資料を何度も読み返しました。(配布資料の中には)「労働市場からの増え続ける要求にへつらうべきではなく…」という強い表現もあって目を惹きました。その文言に続き、「すべての人間の発達の必要性や多様な進路を考慮する全体的な見方を取り込むべき…」と書かれており、個人のキャリアに向き合う時、「社会」「生物」「心理」を含めたホリスティックな視点が必要なことを感じました。まさに、「個人のキャリアは、人生の選択の全てを含みこむ」とある通りだと思います。
  • IAEVGの2013年コミュニケに大きな感銘を受けました。欧州を中心とした世界では人権宣言のように社会正義のキャリア支援が位置づけられて発展している状況を知り、日本での企業内キャリアカウンセリング中心の現状とのギャップを実感しました。「コミュニケを読む会」で語り合って、理解を深められたらいいですね。
  • 2013年のフランス(モンペリエ)の社会正義コミュニケは、恩師とともに生まれて初めて訪れた思い出の地の出来事です。しかも、今、自分が社会正義のキャリアソーシャルワーカーとして活動をしていることを思うと、こんな嬉しいことはありません。
  • 2013年のコミュニケについて、そのフランスでの意味や背景、大切にする意義について興味深く学ぶことができました。世界の主流であること、その一方で、日本における世間一般的な意識について現状や今後の方向性を考える機会になりました。日頃はあまりピンとこない「サステナブル」ですが、日本と欧米の視点からの気づきがありました。
  • IAEVGの社会正義コミュニケにある「キャリア支援実践家に求められる、4種類の『人』の定義」がとても腹落ちする表現でした。この部分は、企業領域に属するキャリアコンサルタントの方々が共有していく価値のある情報だと感じました。
  • 下村先生から「サステナブルキャリア」、「デーセントワーク」、「グリーンガイダンス」というキーワードを共有いただき、「幸福・健康・環境との調和」において「環境」を企業領域に限定しない幅広い捉え方を持つことの重要性も再認識できました。
  • ヨーロッパと日本では、「キャリア」というもののベースが全く違うと感じます。ヨーロッパは「人権」が土台ですが、日本は企業の利益、企業への還元など、労働者の人権は二の次と感じます。だからこそ、社会正義!

  • 最新の社会正義研究の動向を毎回興味深く拝聴しております。今回も大変勉強になりました。ありがとうございます。日本ではSDGsとかサステナブルで括ってしまう話ですが、もっと深く追及していっても良いかと感じました。
  • 社会正義のキャリア支援に関するニッチな情報を惜しげもなく、情熱をもって伝えてくださる下村先生のお姿に力をいただいています。ご著書(p.332)にある組織内で然るべきポジションを得たときに、今の自分ならば、社会正義に向けた環境整備ができると気づくかもしれません。その時、キャリア支援の職分のひとつに社会正義の重視があると主張する理屈があるという、そのことが重要になるのです」というフレーズが、現在の職務を遂行する上でひとつの指針になっております。
  • サステナブル・キャリア」、「ディーセントワーク」、「グリーン・ガイダンス」が社会正義のキャリア支援論の潮流となっていることを学びました。これらが地に足の着いた言葉として力を持つようにするための学びと実践に取り組んでいきたいと思います。
  • 「グリーン・ガイダンス」、「ディーセントワーク」など、これらの言葉の定着にはまだ時間が掛かりそうです。ただ、日本においても、これからのキャリア業界のトレンドワードになると思います。
  • 下村先生は、社会正義のキャリア支援をいかに企業に浸透させるかを長年考えられているとのこと。ダイバーシティ、インクルージョンのように、ソーシャルジャスティスも浸透すればよいと思います。
  • 企業内キャリア支援が中心となっている日本社会で、どのように社会正義のキャリア支援を実現することができるのか、引き続き理解を深めてアクションにつなげていきたいです。
  • 社会正義のキャリア支援を企業レベル(人事)へ入れていくことは大変難しいと思いますが、SDGsが企業の社会貢献として浸透してきたように、現場レベルからでも啓発活動を広げていきたいです。
  • キャリア支援の本質が社会正義にあることを認識し、その実現に少しでも関われるように研鑽していきたい。
  • マイノリティは、声は小さいとしても、連携することで大きな声とすることもできる。個だけではなく、個を取り巻く環境への働きかけもキャリア支援にとって重要な役割と感じた。
  • 貴重な学びの場をいただき、ありがとうございます。私は女性だけの小さな職場の人事労務担当なので、視野が狭くならないように今回初めて参加させていただきました。下村先生をはじめ、皆様の視野を自分にも取り込みながらキャリア支援ができるように自己研鑽していきたいです。
  • 下村先生がこの研究会をとても楽しまれていることが伝わってきて、受講している私もいつも楽しい気持ちになります。オンラインの画面越しに、下村先生のお人柄や熱い想いが伝わってくることもあり、直にはお目にかかっていないのですが、とても身近な感じがしております。今後ともよろしくお願い致します。
  • 下村先生の自然な在り方や語りが染み入るように入ってきました。気負うことなく、軸となる在り方をぶらすことなく、私も先生のような支援者で在りたいとつくづく思います。次回も楽しみにしています。
  • 「社会正義のキャリア支援」という崇高な活動を日本でどのように広げていくか。個人レベルではなかなか難しく、われわれがもっと団結して動いていくことが大切ではないかと感じました。
  • 下村先生も「away」で居られること、凄く頼もしく感じました!明日から元気に頑張れます!
  • 世界での流れ、外国と日本との解釈の違い、現場でのaway感。だからこそ、こういったサードプレイスでエンパワメントされ、日常に戻っていく。下村先生のご著書を読み込みながら、次回の研究会を楽しみに過ごします。ありがとうございました!
  • 下村先生が「日々のキャリアカウンセリングに携わっていて、(気持ちが)落ちたときにパーソンズへ立ち返る。(キャリアカウンセリングというものは)伝統のある太い取組みであることを思い出している」とおっしゃっていたことが印象的でした。大御所の先生であっても、そのような思いに駆られることがあるのだと、気持ちが楽になりました。
  • 下村先生の、「キャリアをテーマに活動していて、自信がなくなったり、落ち込んだりするときに、パーソンズに立ち返る」というお話が心に響きました。私もキャリア活動を始めたときに、「軸が見えない、足元が定まらない」という感覚の中で、社会正義のキャリア支援論に出会ったので、同じようなものを感じました。「自分をセンタリングできるものがある」のは、とても有り難いことだと思います。お忙しいと思いますが、このような勉強会や研鑽の場が今後もいただけますように、よろしくお願いいたします。
  • 大きな社会課題はあるけれど、それを解決するには課題をさらに細分化し、自分が身近に取り組めることを実行していくことが大事だと思いました。どんなに議論をしていても、小さくても行動に移していかなければ何も変わりません。私は、現在の職場において人事労務担当者として働きやすい職場をつくっていくことで、間接的に社会課題の解決支援に取組んでいますが、いつか社外の方々のキャリア支援に関わりたいと思いました。
  • 毎回、下村先生から最新の情報と解説を直接お聞きできる有意義な時間をありがとうございます。私自身は長年、国連の人権条約の研究・普及にかかわって、ロビー活動を行ってきたので、社会正義のキャリア支援とはたいへん共通点が多く、親和性が高く、もっと勉強したいと思います。
  • この数年、社会正義のキャリア支援について、ゆっくりと新しい資料や学びを深める時間を持つことができていませんでした。今回の機会をいただいて、国内外の文献や研究報告、地道な活動など、いろいろな情報を知って学びを深めていきたいと思いました。このテーマを知って、学び合える場が増えていくことがとても嬉しいと感じました。

2.テーマ別交流会(グループディスカッション)

参加者のみなさんから寄せられた「関心のある支援テーマ(ミドル・シニア、女性、障がい者、ビジネスケアラー、生活困窮者、ハラスメント被害者など)」でグループに分かれ、意見交換を行いました。

参加者の学び、気づき、感想など

  • さまざまな環境で支援に取り組んでいらっしゃる方々と対話ができ、楽しいグループディスカッションでした参加者個人のキャリアに触れることにより、違う角度の学びができることも魅力的です。
  • テーマ別交流会も、とても良い時間でした。テーマに関心がある人同士で話ができて、グループ内には当事者の立場から支援をスタートした方もいました。(自分自身も含め、支援の場をまだ持っていない方とは)「お互いに、支援者としてスタートできるといいですね」とメッセージを交わしました。
  • 障がい者への支援をテーマとするグループに参加しました。グループ内では、「発達障がいの診断のない方(グレーゾーン、気づきのない人)に対する支援」の話題があがりました。私は、カウンセラーとの対話によって、本人が自分自身を知り、どのように対処していくかを一緒に検討することで、健康的にその人らしく生きるための気づきを与えることができると考えています。
  • 社会正義を実現するために、さまざまな障がいの特性を学び、個別の背景やクライアントが求めているものを見極めながら、どのような支援方法が最も効果的で、また相手にとって有益であるかを見極めることが求められているように思います。
  • 初参加だったので、自己紹介やお互いの状況のお話に花が咲く時間も多かったのですが、いろいろな立場の方が社会正義をどう見ているのか、どのような可能性を感じているのかなど、聞くことができて面白かったです。他のグループの方ともいろいろお話をしてみたいなと思いました。
  • 4人のグループでしたが、同じ当事者経験を持つ人が私自身も含めて3人いました。まさに、「(日頃はマイノリティとされる存在が)マジョリティ」な空間がそこにありました。また、キャリアコンサルタントになったばかりの方から、「生きづらさを抱えている人の支えになりたい」との思いも伺うことができ、温かい気持になりました。改めてこの場の大切さを感じた次第です。
  • 同じグループになった方々は、ご家族の障がいを支えながら前向きに向き合っていらっしゃいました。「(障がいとは)異なる個性」であり、「(障がいの無い人も)誰もが少数派であることを実感しました。
  • 地方自治体が企画するSDGsの会合で「キャリアコンサルタントはディーセントワークの実現をめざす」と発言したことがありますが、周りの参加者はほとんど無反応だったことをグループディスカッションで話しました。SDGsの会合の経験がこのような形で活かせて良かったと思います。
  • (研究会には)企業や公的機関などの活動領域を問わず、「社会正義について考えたい」という方々や、支援に日々取り組んでいる方々はもちろん、当事者としての経験から「何かしたい」と考えている方がいらっしゃることに勇気をいただいた
  • 「社会正義」にもいろいろな視点があり、実際の声を直接お聞きする機会は大切で、それぞれに携わっている支援者の連携や社会全体への広がりにつながると感じた。
  • 下村先生の「本質」に立ち返る、という言葉が心に響いた。一般のキャリアコンサルティングと社会正義のキャリア支援とでは何が違うのか?「それぞれに問題を抱えて困っている」という意味では、違いなどないのかもしれない。その一方で、テーマ別交流会で同グループになった方々が支援にあたっている方たちは、「手を差し伸べないと一人では動けない」ことも多いため、何ができるのかを常に問うていきたい。

当研究会顧問の下村英雄先生からのコメントです

下村英雄先生

    ~ 今回の研究会について ~
 
 今回、テーマ別グループディスカッションを踏まえて、「分断がある限り、サステナブルな社会にはならない」という意見がありました。とても良い視点だと思います。

 ILO(国際労働機関)では、サステナブルな社会への移行に伴い、「皆で平等に移行しよう」というジャストトランジション(公正なる移行)の概念を強調しています。金銭的に豊かだったり、社会的地位が高かったり、中心層にいる人の方が周辺層の人よりも移行しやすいからです。

 これには批判もあるでしょう。「本当に分断が無くなるのか?」「完全にサステナブルな社会になるのか?」と。

 もちろん、分断を無くすことは難しいと思います。それであっても、「無くそうとする」ことは可能ですよね。

 「無くならないのだから、そのまま放っておく」ことと、「無くならないのだとしても、無くそうとする」ことでは、大きな違いがあります。

 分断が完全には無くならないものだからこそ、常に無くそうと努力すべきであり、サステナブルな社会になることも完全にはあり得ないからこそ、常にそちらへ近づいていくべき、ということです。

 この研究会が「良いな」といつも思うのは、このように皆さんから意見をいただいたり、チャットに書き込んでいただいたりすると、私自身が「もっと頑張らなきゃ」というか、力をいただくというか、元気づけられる思いがすることです。

 今回も有意義な会合でした。私にとって、本当にかけがえのない会合です。ありがとうございました。

研究会の振り返りやコメントをお寄せいただいた皆様、ありがとうございました!
次回は3月22日(土)に東京で対面(リアル)開催します。(お申込みはこちらから
皆様とお目にかかれることを楽しみにしています。

(社会正義のキャリア支援研究会 事務局)

【開催告知】
第6回社会正義のキャリア支援研究会 

2025年3月22日(土)10:00-15:30 
対面(リアル)開催@東京会場

【研究会参加】お申し込みはこちらをクリック!(Peatix)

研究会には各回の単発参加も可能です。
お一人でも、紹介者無しでも、大歓迎です!
キャリア支援の相互研鑽&仲間づくりの「拠り所」として、お気軽にご参加ください☺
多くの方々のご参加を心よりお待ちしております!


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主宰:SJキャリア研究所

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